税理士が解説する わかりやすい相続税と贈与税

こんなにも大変!?相続税申告手続までのスケジュール

前回のコラムでは、相続とはなにか、そして相続税はどのようなケースで発生するのかを見ていきました。

では、実際に相続が発生した場合は、いつまでにどのような手続きが必要となるでしょうか。

今回は相続が発生した際の主要な手続きについて、相続発生後から時系列順に解説していきます。


相続発生時の主要な手続きとそのスケジュール

相続が発生した場合、主要な手続き一覧とそのスケジュールは以下の通りとなります。


スケジュール表にある相続の起算日とは、「相続の開始があったことを知った日」を指します。

「相続の開始があったことを知った日」は、通常被相続人が亡くなられた日となります。


相続人の確定・戸籍謄本等の取得

相続発生時にまず行わなければいけないことは、相続人の確定です。

相続人とは、法律によって相続権が定められている人々のことを指します。

今回は、相続人確定のために必要な2種類の書類を紹介します。


①被相続人の戸籍謄本

被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍一覧が確認できます。

被相続人の本籍地を所轄する市区町村役場にて取得することができます。

本籍地の変更があった場合は、変更前後それぞれの本籍地を所轄する市区町村役場にて取得する必要があります。

相続税申告では、相続開始日から10日を経過した日以降に取得した戸籍謄本の提出が求められます。

取得する際は、相続開始日から10日を経過した日以降に取得しましょう


②被相続人の改製原戸籍

戸籍謄本は戸籍法の改正により、新しい様式へ戸籍情報を転記することがあります。

その際に全ての戸籍情報が転記されない場合があります。

改製原戸籍とは、新しい様式へ転記される前の戸籍情報を確認する書類となります。

戸籍謄本と同様に、被相続人の本籍地を所轄する市区町村役場にて取得することができます。


今回紹介した書類以外にも、除籍謄本や戸籍の附票、法定相続情報一覧図などの公的書類が必要となる場合があります。


相続人の把握は、相続手続きの中で最も重要です。

相続人を見落としてしまうと、この後解説する手続きをすべてやり直さなければならないおそれがあります。

そのため、必要な書類を全て集め、慎重に相続人を確定させるようにしましょう


相続人の確定後は相続人全員分の戸籍謄本・住民票を取得しましょう。

これらは、相続税申告の際に必要となります。


遺言書の確認

相続人が確定したら、遺言書があるかを確認します。

遺言書によって被相続人の財産を譲ることを遺贈といい、遺贈は以下の2種類に分けられます。


   ①特定遺贈:相続人がどの財産を相続するか具体的に指定する

      ex.相続人Aに土地・建物を、相続人Bに甲株式を相続させる


   ②包括遺贈:相続人が相続する財産の割合のみを指定する

      ex.相続人Aに財産の4割、相続人Bに財産の6割を相続させる


特定遺贈により財産を受け取る人を特定受遺者、包括遺贈により財産を受け取る人を包括受遺者といいます。

遺言書の有無や遺言書の内容によりこの後解説する相続手続きが異なりますので、必ず確認するようにしましょう。


遺産の確認・財産目録の作成

次に、被相続人の遺産を確認します。

遺産とは、被相続人の全ての財産と債務となります。

財産と債務の確認後は、財産目録を作成しましょう。

財産目録は、遺産分割協議の際や相続税の申告の際に必要となります。


限定承認・相続の放棄の申述

相続人は、原則被相続人の全ての財産・債務を引き継ぐことになります(このことを『単純承認』といいます)。

しかし、引き継ぐ債務が財産より多い場合、相続後に相続人の負担となってしまいます。

そのため、次の2種類の方法のいずれかを選択することができます。


  ①限定承認:相続する財産を限度として、債務を相続する


  ②相続の放棄:一切の財産・債務を相続しない


限定承認・相続の放棄を選択する場合は、「相続の開始があったことを知った日」から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。

また、相続の放棄は相続人単独で行うことができるのに対して、限定承認は相続人全員で行う必要があります


所得税・消費税の準確定申告

被相続人が確定申告が必要な場合は、1月1日から被相続人が亡くなられる前日の日までの期間の確定申告が必要となります。

この確定申告を準確定申告といいます。

準確定申告は相続人が申告して、申告時に発生した所得税・消費税を相続人が納付する必要があります。

準確定申告の申告・納付期限は、相続の開始があったことを知った日から4ヶ月以内となります。

準確定申告が必要かを確認して、必要な場合は忘れずに申告・納税するようにしましょう。


遺産分割協議・遺産分割協議書の作成

被相続人の遺産全体を確認後は、遺産分割協議を行いどの財産を誰が相続するかを決定します。

遺言書に全ての財産・債務が特定遺贈となる場合は、遺産分割協議の必要はありません。

遺産分割協議は、相続人もしくは包括受遺者全員で協議を行わなければなりません

協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成しましょう。

そして、相続人もしくは包括受遺者全員が協議に同意したことを示すために、遺産分割協議書には全員の署名・実印の押印をしましょう。

この際、印鑑証明書を遺産分割協議書に添付することで遺産分割協議書の信頼性が高まります。


相続税の申告・納付

遺産分割協議が終了後、相続税申告書を作成して税務署に申告します。

申告する税務署は、被相続人が住んでいた地域を所轄する税務署となります。

申告後は、相続税の納付を行います。

相続税の申告・納付期限は、相続の開始があったことを知った日から10ヶ月以内となります。


余裕をもって手続きを進めましょう!

ここまで、相続税申告までの主要な手続きについて解説しました。

今回ご紹介した手続きの他にも、銀行口座・社会保険関連・生命保険の請求といった手続きも必要となる場合があります。

相続税の申告・納付期限は、相続の開始があったことを知った日から10ヶ月以内となります。

気づけば10ヶ月が経過する、ということにならないよう、余裕をもって手続きを進めましょう。


次回は、今回ご紹介した手続きについてより掘り下げてご紹介する予定です!