税理士が解説する わかりやすい相続税と贈与税

終活での相続対策!相続時精算課税制度を活用しよう

皆さんは「終活」という言葉を聞いたことがありますか?

「終活」とは、自分の人生をより良く締めくくるため、自分が亡くなった後に家族が困らないようにするために、将来を見据えて計画を立てる活動のことです。

「終活」の例としては、遺言書の作成や大切な物の整理などがあります。

特に、相続税という税金に関しては、適切な対策を講じておかないと、残された家族に大きな負担をかけてしまうこともあります。


そこで、相続税を軽減するための方法として注目されているのが「相続時精算課税制度」です。

今回は、この制度がどのようなものか、メリットやデメリットも踏まえて分かりやすく説明します!


相続時精算課税制度って何?

相続時精算課税制度とは、親が生前に子どもや孫に財産を渡す際に利用できる特別な制度です。

この制度を活用すると、財産を贈与する際の税金が軽減され、親が亡くなった後に最終的に相続税として精算される仕組みです。


具体的には、親が子どもや孫にお金や不動産をあげるとき、その金額に対する贈与税を軽減できます。

ただし、親が亡くなった際は、その財産は相続財産として扱われ、最終的には相続税として支払うことになります。


相続時精算課税制度のポイント

①2,500万円までは贈与税が発生しない

相続時精算課税制度を利用すると、親から子どもや孫に贈与する金額が2,500万円までなら贈与税が発生しません

これにより、親が一度に比較的大きな額の財産を贈与する場合でも、贈与税がかからず、贈与を受ける側にとって非常に有利です。


この2,500万円という基準額は贈与を行う親や祖父母ごとに選択できます。

例えば、父親から2,500万円、母親から2,500万円の贈与を受けた場合、両親それぞれに特別控除額が適用されるため、合計5000万円まで贈与税がかからないことになります。

②1年の贈与金額110万円までは課税対象にならない

毎年贈与する金額が110万円以下であれば贈与税はかからず、2,500万円の特別控除額にも含まれません。

また、年間110万円以下の贈与は、贈与者が亡くなった際に相続財産には含まれないため、相続税の対象にもなりません

この点は、相続税対策として非常に有効です。

③年間110万円を超える贈与には申告が必要

年間110万円以下の贈与は贈与税がかからないため申告は不要ですが、年間110万円を超える贈与があった場合、超えた金額について贈与税の申告書が必要となります。

例えば、親が子供に120万円を贈与した場合、超えた10万円が贈与税の対象となり、申告が必要です。


相続時精算課税制度の適用要件は?

①贈与者(親など)と受贈者(子どもや孫)の関係

贈与者は60歳以上の親や祖父母など、受贈者は18歳以上の子どもや孫などです。

②贈与者と受贈者の間の関係が親子や祖父母と孫であること

この制度は、親から子へ、祖父母から孫へ贈与する場合に適用され、兄弟間やその他の親族への贈与には適用されません。

③選択届の提出

この制度を利用するには、相続時精算課税制度を選択する届出書を税務署に提出する必要があります。
届出は、贈与が行われた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に提出しなければなりません。

④相続時精算課税制度を一度選択すると、その後の贈与にも適用される

この制度は一度選択すると、贈与者が亡くなるまで、受贈者が受けるすべての贈与に適用されます。

途中で制度を取り止めることはできません。

⑤贈与財産の種類

現金や不動産、株式など、基本的にはあらゆる贈与対象となりますが、贈与の際に特別な制限がある場合もあるため、詳細については確認が必要です。


相続時精算課税制度のメリット・デメリット

相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度を利用するメリットをお伝えします。

贈与税の軽減

年間110万円までの贈与には贈与税がかからず、通算で2500万円まで非課税となるため、比較的大きな額を贈与することができます

相続税負担の軽減

親が亡くなった後、贈与した財産は最終的に相続税として精算されますが、贈与の際に税金が軽減されているので、相続時にかかる税金の負担を減らすことができます。

早期の相続対策が可能

18歳以上の子どもや孫にも贈与できるため、早い段階で財産を引き継がせることができ、将来の相続税を軽減する準備を早期に行えます。


相続時精算課税制度のデメリット

一方で、相続時精算課税制度にはいくつかのデメリットもあるため、注意が必要です。

相続時に再度税金がかかる

贈与時に税金が軽減されても、最終的に相続税で調整されるため、相続時には高額な税金がかかる可能性があります。

小規模宅地等の特例が使えない

相続税の軽減措置である「小規模宅地等の特例」を利用できません。
そのため、特に自宅の土地を相続する際に相続税が高くなる可能性があります。


まとめ

相続時精算課税制度は、終活の一環として非常に有効な方法です。

親から子どもや孫に財産を渡す際に税金が軽減されるため、早期に相続税対策を講じることができます。

ただし、最終的には相続時にその分が精算されるため、贈与と相続のバランスを慎重に考えることが大切です。


もし家族に大きな財産がある場合や相続税の負担を減らしたい場合は、この制度を利用することで将来の税金負担を軽減できるかもしれません。

しかし、制度にはデメリットもありますので、相続対策をお考えの方は弊所へお気軽にご相談ください。


終活の一環として、自分がどのように財産を渡すかを考え、家族にとって最も負担が少ない方法を選びましょう。

それが、将来の家族の幸せに繋がる第一歩となります。